TRUIM SOUND MEERING 2026 in 北海道 課題曲解説

イベント開催まで、いよいよあとわずかになりました。今回は審査員に土方氏より、課題曲の聴きどころやポイントについて解説をいただきました。ぜひ参考にしてみてください。

❶ ヨルシカ 「茜」
https://www.qobuz.com/jp-ja/album/madder-yorushika/lsf97uk5pdnc5?qref=bsk
イントロでは左右のギターがそれぞれ独立して聴こえるため、ここで音場の広さと左右バランスを確認できます。理想は、左右が均等に展開し、どちらか一方のギターだけが極端に強調されないことです。音場が左、あるいは右に引っ張られてしまう場合は、定位やレベルバランスを見直してください。

この曲で、まず重要になるのがドラムの定位です。ドラムはサウンドステージ全体に広がるというより、センターにしっかりと定位するタイプの録音です。可能であれば、車両のセンターコンソール(バックミラー)の軸上にドラムが定位するように調整してください。低域の量感は軽すぎない程度に必要ですが、かといって重低音を強調する楽曲ではありません。あくまでソースに忠実な量感に収めることが重要です。

Aメロ、つまり曲冒頭から入るn-buna(ナブナ)のボーカルは比較的オンマイクで録られています。サビでは女性ボーカルのsuis(スイ)が加わりますが、ここでは両者の声質の違いを描き分けられるかが聴きどころになります。また、こちらもセンター付近に定位させたいところ。サビでは、同時に音数も増えるため、ボーカルや楽器が混濁せず、それぞれの輪郭と質感を保ったまま聴こえるかを確認してください。



❷ Kendrick Lamarアルバム「GNX」から トラック 2『squabble up』
https://www.qobuz.com/jp-ja/album/gnx-kendrick-lamar/n9dqr0t48rj3b

アメリカ合衆国出身の人気ラッパー Kendrick Lamar のアルバム『GNX』は、グラミー賞において最優秀ラップ・アルバム賞を含む5部門を受賞しました。本楽曲は、もう1つの課題曲であるヨルシカ以上に、システムの総合力(特に低音域の表現)が問われるチャレンジングな音源だと思います。しかし逆に言えば、上手く鳴らし切れれば、一発で強い印象を残せる可能性を持った楽曲でもあります。

帯域バランスについては、本楽曲の持つ攻撃性やエネルギー感を損なわない範囲であれば、ある程度の“ドンシャリ”方向、つまり高音域と低音域を持ち上げたバランスも許容したいと思います。ヒップホップというジャンル特性上、リズムに合わせて言葉を刻むケンドリック・ラマーのフロウを強く感じさせる必要がありますし、低域をやや強めに演出しても構いません。「俺(私)の迫力あるサウンドを聴いてくれ」という積極的なアピールは歓迎したいところです。

ただし、過度な低域強調によって、楽曲本来の意図や質感を壊してしまうのは避けてください。単に低音を大量に出せば迫力が出るわけではありません。本質的な迫力とは、低域のエネルギー感に加え、過渡応答、つまり低音の立ち上がりと立ち下がりの速さ、さらに音階やディテールまで再現できて初めて成立します。

イントロのラップは、比較的小さめの音像でセンター定位します。その周囲をトラック全体が取り囲むように展開していくため、まずはセンター定位の精度が重要です。重量感と弾力感を併せ持ったエレクトリックベースもセンター付近に定位しますが、ここで低域が膨らみすぎると、肝心のラップのリズム感や言葉の輪郭が曖昧になります。逆に、制動力が高く、過渡応答に優れたシステムでは、キック、ベース、ラップが一体となって前に飛び出してきます。

以上、課題曲の魅力をより深く感じるきっかけになれば幸いです。当日、皆様とお会いできることを楽しみにしております。